リレーエッセイ

名古屋広告業協会会員によるリレーエッセイです。

2015年2月26日公開
第10回 ぶらりひとり旅へと

(株)アサツー ディ・ケイ中部支社の渡辺と申します。 (株)I&S BBDOの谷口様からのバトンをお預かりし、第10走者を務めさせて頂きます。
お正月の風物詩で90年以上の歴史を重ねる「箱根駅伝」に例えると、~仲間が繋いできたタスキと想いをゴールまで運ぶ責任重大な区間~。 ただこの競技(?)ではまだまだ序盤戦。この先50社・90名を超える優秀な選手の皆様がお揃いなので、マイペースでのんびりと走らせて頂きます(笑)。

さて、そうは言いつつも実際の毎日はのんびりマイペースとはほど遠く、毎朝8時と意外に早い出社から深夜の帰宅まで、張り詰めた緊張感の中で怒涛の日々を送っております!
・・・なんて、こう書くととってもカッコいいビジネスマンを想像しちゃいますが、実際はモグラのように会社に籠り、ほとんど意味のない(と思われる?)社内資料作りに追われる日々。 やっと外に出て空を仰げると思いきや、その実はお詫びの行脚へと強制連行。心待ちした青空とは裏腹に、目の前に映るのは自分の靴の汚れたつま先ばかり。 さらに夜は夜とて、安居酒屋で愚痴をツマミにくだを巻く・・・まぁ典型的な冴えないサラリーマン人生ですね(苦笑)。

そんな私の息抜きは旅行。そう、ぶらりひとり旅です。
元来要領が悪いので長期休暇はなかなかとれず、また日々蓄積するストレスを頻繁に排出する必要もあるため、もっぱら週末を使った1泊か2泊での手軽な国内小旅行です。 (ちっちゃいなぁ~ このあたりが、やっぱり冴えない感じですねぇ)
訪れた先で見ず知らずの人と言葉を交わし、思いがけず目にした絶景に柄にもなく涙したり、ふらっと立ち寄った酒場で腹の底からバカ笑いする。
ひとり旅は「自分知らない世界」が魅力なのではなく、「自分知らない世界」に身を置く解放感、そしてそこで気づかされる人の正邪や等身大の自分。 単なる観光や気分転換だけでなく、自分自身を見つめ直すのにもとても良いストレッチだと思います。

こんなことを、2ヵ月に1度を目標に30代後半から15年ほど続けています。 今まで60か所を超える新たな土地で、新たな出逢いや想い出をつくって参りました。 もちろん木曽福島や鹿児島、愛媛の松山など、気に入ったところには何度も足を運びます。
なお旅程以外にも、ゆる~い決め事もあります。
別に人跡未踏の地や秘境を目指す訳ではないので、まずは思い立ったらフラっと、できるだけ具体的な目的や計画を立てない。 あと肝心なのは無駄な体力を使わない。 つまりは彼方此方と動かず、行けなかった所があればまた来ればいいと。 そして最も大切なのは、飯と酒を楽しめる街があること。 気取らないけど何故かしら心を動かされる、そんなお店の暖簾をくぐり店主が勧める土地の料理と地酒に舌鼓。 そしてそこで聞き得たネタをもとに、次に訪れる先を夢想し胸を躍らせる。 また時たま居合わせた客との何気ない会話の中で、人生劇場の泣き笑いを演じる・・・とにかく、つらい日常(?)からの脱出が目的でもあるので、なるべく「考えないことを考えた旅」を工夫しています。
この程度なら、ちょっとだけのお金と時間があれば十分続けられますよね。冴えない庶民のささやかな息抜きです(笑)。

昨年も1月に特急ゆふういんの森号で訪れた別府にはじまり、春から夏にかけては奄美大島や多良間島といったと南の島々でのんびり過ごし、秋には釧路や大間で新鮮な魚介を堪能。 そして年末は、指宿の砂むし温泉で一年の疲れを癒す。 こんな気ままな一人旅を続けて参りました。
直近の楽しみは出雲の神社巡り。 3月末から県営名古屋空港にFDAの直行便が就航することになったので、4月には訪れてみようかとボンヤリ思っております。

今回この執筆の機会を頂き、改めて自分自身の足元を確認することもできました。
「広く告げる」ことを生業とし、コミュニケーションビジネスなどと訳がわからない単語を口にしていても、実際の自分はとっても狭小の世界に生きている・・・毎日きまった電車に乗り、いつもと同じ人と会い、似たような言葉を交わし、そしてまた大して代わり映えのしない目的のためだけに、せわしなく次の朝を迎える。
もちろん、これが決して無意味な生き方だとは思いません。 ただ、そこにちょっぴり素敵な意味を見出すためにも、「自分を知らない世界」に身をゆだねるひとり旅は、これからも続けていきたいと思います。

さてと。のんびりと走って参りましたが、ここらで次の走者の方にバトンをお渡しいたします。ではでは・・・

【著者紹介】

広報委員
株式会社 アサツー ディ・ケイ 中部支社
支社長

渡辺 全人(わたなべ まさひと)