リレーエッセイ

名古屋広告業協会会員によるリレーエッセイです。

2016年8月24日公開
第24回 「古都リップ」

株式会社大広の岸 篤郎さんのご指名で、僭越ですが拙文を綴らせていただきます。 今、私はNHKの京都五山送り火という番組を再生しながらスマホとタブレットでSNSやオリンピックを確認、手元のノートPCでこの原稿を書き始めました。 先般、私共のグループがまとめたメディア関連の報告を聞きましたが、生活者を取り巻くメディア環境は著しく変わり私たちの日常生活に深く浸透していると改めて感じてしまいます。 時代に追い越されずこれからも時代の少しだけ前を歩いて行けるように仕事や遊び、趣味に目一杯取り組んで行きたいと思います。

前置きはこれくらいにして今日は私の趣味のひとつ、京歩きについてお話ししたいと思います。 もともと歴史好きで大河ドラマは毎回欠かさず見ます。受験のときには山川の用語集を隅々まで頭に入れて臨みました。 大学生活を京都で過ごすことになり、何か京都らしいことはないかと覗いたサークルが史跡同好会。 何とも地味なサークルかと思えば今なら歴女と呼ばれる女子が多く、これはきっと楽しい大学生活が送れると入会。 週末に仲間とワイワイ京都の名所を巡るだけの気楽な集まりのはずが、毎週行く史跡を下調べしてテーマを決め前日に討論会、その後やっと現地に赴くという真面目なものでした。 大学の4年間でかなりの数の史跡を訪れました。 今思うともともと目的が観光ではなく歴史探訪的なサークルだったので飽きずに続いたのかもしれません。 OB会のFBから「祇園祭宵々山散策」7/15金曜日18:00地下鉄四条駅北側改札前集合って招待が届いたりしますが、仕事があるから無理って心で思いながら顔はにやついているのが分かります。

そんなことから今でも京都はよく出かけます。 特に名古屋に来てからは新幹線で30分、気の向くままノープランでも楽しめます。京都本も沢山溜まりました。 サライや一個人の京都特集は必ず買います。デパートの京都展も好物のひとつ。家族旅行も史跡を回るだけ。 そんな旅行に小さいときからつき合わされて鍛えられた子供は何だか他のひとより歴史が好きだったり、理系なのに日本史はノーベン(全く試験勉強しないこと)でも高得点が採れたりしています。 いつも分単位で史跡めぐりを詰め込まれたり、逆に何時間も庭を見せられたり子供たちにはかなり迷惑を掛けました。 流石に今は楽しみ方を変えて、旨いもの探しから訪れる史跡を決めています。 妻孝行というか妻対策ですね。これは実に大切。 ひとり旅は苦手なものですからやはり仲間に引き入れて楽しみを理解してもらわないと面倒なことになりますから。

では皆様ここから、旅行ガイドと朱印帳、記念スタンプ帳に単眼鏡など7つ道具をお気に入りのショルダーに詰めてさぁ出発、とある日の私の京歩きにお付き合いください。 皆さんは今、外国人に一番人気のある京都の神社はどこか知っていますか? 伏見稲荷大社が数ある世界遺産を抑えて外国人観光客NO.1の人気とか。 その理由は“朱と緑の魔界の神秘性”だそうです。 朱色の鳥居が山の上まで連綿と続く光景に神秘さを感じる人が多いということでしょうか。 「お山巡り」は約4㎞、2時間ほどの行程です。 その参道に立ち並ぶ、約1万基もの朱色の鳥居は壮観です。 鳥居の裏側には寄進した方の名前が書かれていますが東海地方の名家や企業の名前も数多くあります。 今度行かれたら気にして見られるとまた面白いですよ。

京都屈指のパワースポットを堪能したところでそろそろお腹がすきませんか。 参道の「稲福」でいなり寿司と名物うずら焼きをいただきましょう。 ここのいなりは甘辛く味付けた豆腐店特注のお揚げにゴボウや白ゴマを混ぜた酢飯が詰められていてとても素朴ですが京の伝統を感じます。 うずら焼きは形が少々グロテスクですが油がのっていてとてもジューシーです。是非トライしてみてください。

お腹が一杯になったら東福寺まで歩きます。私の旅は兎に角よく歩きます。 ゆっくりと自分の目線と間で歩くと沢山のご褒美が貰えます。 途中、見つけた町のおかき屋さんもそのひとつ。 おばあちゃんと会話をたのしみ、量り売りの京おかきを買って進みます。

暫くすると、藤森神社の神幸祭奉納行列に遭遇、神馬と神輿に並走して向います。 東福寺は臨済宗東福寺派の大本山ですが創建に19年かかったと言われるのも納得でとても広い。 国宝の三門や重要文化財の偃月橋は絢爛豪華ですが、僧侶の日常生活にかかわるお風呂やトイレなども残っています。 興味深いですね。

紅葉時には通天橋から真っ赤なカエデの海が見渡せますが、新緑の時も素晴らしいです。 写真は寺域の外、すなわち拝観料無しで撮れる絶景のフォトスポットからの一枚です。 新緑を満喫した後はさらに徒歩で三十三間堂に向かいます。途中の梅香堂で秘伝の自家製黒ミツを使ったかき氷を食べて気力充実、先を急ぎます。 三十三間堂は大抵の歴史ドラマでは悪役に描かれる後白河上皇が自身の離宮内に創建した仏堂です。 妙法院の一部で建物の正式名称は蓮華王院本堂。本尊は千手観音で、蓮華王院は千手観音の別称の蓮華王に由来します。 皆さんは修学旅行などで一度は訪れたことがあると思いますが千手観音立像1,001躯はいつみても圧巻です。 ここに俵屋宗達の『風神雷神図屏風』のモデルになったともいわれる最古の木造風神・雷神像があるのはご記憶にありますか。 風袋と太鼓をそれぞれ持った風神・雷神の姿をユーモラスに表現しています。

それでは史跡巡りはこれくらいにして夜の四条通りに向かいましょう。 皆様も京の名店は良くご存じと思いますので所謂センベロ系のお店を少しご紹介します。 コンセプトはおばんざいと旨い酒です。 一軒目は四条河原町という抜群の立地にある「たつみ」という老舗の居酒屋です。 カウンターにテーブル、立ち飲みもありメニューは豊富で京都を感じる食材を使ったものもあり楽しめます。 常連ばかりではなく接客もカラリとしていますので一見のおひとりさまでも大丈夫です。 2軒目は観光スポット新京極にあるその名も「京極スタンド」、学生時代から通った店ですが今も変わらず店内は昭和の漂うレトロな空間です。 この2軒は京都では貴重な昼飲みのできるお店です。ちょい飲みではしごも良いです。 最後の1軒は「遊亀」、ここは滋賀の蔵元の経営でとにかく美味しい酒がやすく飲めます。 「金亀」ってお酒ですが精米率でラインナップされていて飲み比べると楽しいです。

いかがでしたでしょうか。 史跡、センベロに興味のある方無い方、楽しんで頂けましたでしょうか。 私の拙文で少しでも京都に興味湧き、はんなりしてもらえたら幸いです。
季節と時間、いつ訪れてもひとつとして同じものはない。訪れる度に新しい気づきを与えてくれる京都。

人生のいつかのタイミングでまた暫く京で暮らすことを楽しみにこの稿を書き終えます。 最後までお付き合い頂きありがとうございました。

【著者紹介】

広告価値向上委員
株式会社 読売広告社 名古屋支社
支社長

水谷 文人(みずたに ふみと)