リレーエッセイ

名古屋広告業協会会員によるリレーエッセイです。

2017年5月12日公開
第31回「アナログかデジタルか」

中日アド企画の吉川です。まだ桜が残る4月の昼下がり、会社で浅田真央の引退会見の余韻に浸っていたところ、電通名鉄コミュニケーションズの臼井さんから5月号でエッセイを書いてくれという電話があり、現実に引き戻されました。元来、書くことが苦手で本当はお断りしたかったのですが、今後の人間関係に響くとマズイと思い、やむなくお引き受けをしました。というわけですので、内容はあまり期待しないでください。

昨年まで東京で勤務をしていたため、ご存じない方もいらっしゃると思いますので簡単に自己紹介から入ります。私は生まれも育ちも名古屋市中村区の生粋の名古屋っ子です。昨年、中日新聞社を定年退職し、その後中日アド企画で勤務をしています。中日新聞社では、一貫して広告局に在籍していましたが、38年の社歴の半分以上が東京勤務でした。バブルもリーマンも経験しましたし、東京時代には東日本大震災にも遭遇しました。リーマンショック以降はつらい事ばかりでしたが、在籍中には中日ドラゴンズの日本一にも立ち会えましたし、全体的にはまずまずの会社人生だったと思います。


2007年に中日ドラゴンズ53年ぶりの日本一になったときの号外。大きいので迫力があります

さて、何を書こうかと思いましたが、経験や知識の豊富な皆様にお伝えできることもありません。ですので趣味の写真を中心に、デジタルとアナログについて思うところを書いてみたいと思います。

私が写真を始めたのは、今から13年ほど前の東京勤務時代。広告主のキヤノン販売(現キヤノンマーケティングジャパン)のHさんが愛知県出身ということもあり、親しくさせていただいたことがきっかけです。当時はまだフィルムカメラが中心で、キヤノンの1眼レフカメラEOS7を社員価格で購入させていただきました。まずは基礎を学ぼうと、これまた同社が運営している写真教室に通い、月に2度の座学とたまに週末の撮影実習をする程度でしたが、楽しい時間を過ごしました。1年後には名古屋に転勤になってしまい、教室も離れあまりカメラも触っていませんでした。4年後にふたたび東京に転勤となり、単身赴任で時間が出来たこともあり、週末に撮影に行くようになりました。撮影対象は専ら風景で、都内にある小石川後楽園や新宿御苑、ちょっと足を伸ばして鎌倉や江ノ島、箱根などにも行きました。遠くに行く場合は、これまた広告主でもあったクラブツーリズムの「写真撮影のバスツアー」に参加、日帰りが中心でしたが、富士山や上高地、日光、長野のほうにも出かけました。

10年ほど前にはデジタルカメラの流れが急速に押し寄せてきました。私も時代の流れには逆らえず、7年前にはレンズが共用できるたキヤノン製のEOS7Dを購入、昨年は富士フイルムのミラーレスカメラも購入しました。しかし古い人間のせいか、なかなかフィルムから離れることが出来ず、今でも両方のカメラを持って使い分けて撮っています。未だにフィルムで写真を撮っている理由は、フィルムでしか味わえない質感があるためです。デジタルカメラも性能が格段に向上し、フィルム以上の再現性があることは認めます。しかもフィルムも今は高価になり、加えて写真の整理や手間などを考えると、デジタルカメラに一本化したほうがいいのですが、なぜかやめられません。


デジタルカメラで初めて撮った写真(長野・富士見高原)。撮影日時など、撮影データがすべて記録されるので便利
 
現在使用中の1眼レフカメラ(左・キヤノンEOS-1V=フィルム、右・富士フイルムX-T2=デジタル)

フィルム販売のピークは2000年。その後は縮小傾向となり、デジタルカメラの進化とともに流れは一気に加速しました。業界最大手の富士フイルムもデジタル化の流れに危機感を抱き、事業転換を図りました。そのひとつにフィルムの技術を活かして開発された「アスタリフト」という化粧品があります。しかし、同社は「フィルム文化は守る」といって、フィルム製造も継続して行っていますし、今でもフィルムのみのフォトコンテスト、写真展なども行っています。


フィルムで撮った写真で作った年賀状(撮影場所は河口湖)

私の前職の新聞社も、写真部という部署があります。フィルムカメラ時代はものすごい量を使っていたようで、中日ドラゴンズの試合では1試合で数百本のフィルムを使うと聞いたこともあります。1球ごとに撮ったり、連写もするのでなるほどとうなずけます。報道でもその一瞬のために多くのシャッターを切るため、半端ないくらいのフィルムが消費されたことでしょう。今はデジタルなのでかなりの経費削減につながったと思われます。


今は販売していない富士フイルムのリバーサルフィルム「Velvia100F」

新聞の総発行部数のピークは、日本新聞協会の発表資料によると1997年の5377万部。その後は減り続けており、昨年は4300万部。約20年で1000万部減ったことになります。また新聞広告のピークは、奇しくもフィルムと同じ2000年。その後はプラスになった年もありますが、減少傾向にあることは業界の皆さんがご承知の通り。それに比べ、インターネット広告の伸びは目を見張るものがあります。特にスマホが普及してから一気に加速、昨年はテレビ広告に迫るほどまでに成長しました。そのうちシェアでトップに立つ日が来るかもしれません。

先日、実家の荷物整理をしていたら、学生時代に買ったアナログ盤のレコードが大量に出てきました。今、若い人にも人気だそうで、売れば高額で引き取ってくれるといいます。再生するには、専用プレーヤーはもちろんのこと、レコード盤をきれいにしてからターンテーブルに置き針を落とすなど、手間がかかりますし、サイズが大きいため収納の場所をとります。しかしレコードならではの味わいもあります。お金に困ったら売ることを考えるとして、今は老後の楽しみとして残しておこうと思います。


初めて買ったビートルズのLP盤レコード「アビー・ロード」。大きいので保管場所には困ります。

アナログにもデジタルにもそれぞれに良さがあることは否めません。どちらを選ぶかは消費者の選択次第。新聞もいつか若い人に見直され、息を吹き返す時が来るのでしょうか?そんな日が来ることを祈りながら筆をおきたいと思います。アナログのイメージが感じられる浅田真央のこれからのことも気になりますが…。

【著者紹介】

教育セミナー委員
株式会社 中日アド企画
常務取締役

吉川 克也(よしかわ かつや)