リレーエッセイ

名古屋広告業協会会員によるリレーエッセイです。

2020年8月5日公開
第52回「ラジオ愛、再び。」

電通中部の𡈽橋さんからご指名いただいたADKクリエイティブ・ワンの加藤英明と申します。

今回はラジオに関して書かせていただきたいと思います。
(少しローカルな話です。ご容赦ください。)

みなさん、最近ラジオ聴いてますか?
この頃はwebに押されがちなイメージもあり、オールドメディア的な扱いをされる場合もあったりしますが、新しい可能性とともに若いファンも生まれつつあるようです。

新型コロナ感染防止のため、在宅ワークを始めてからというもの、ラジオとの接触時間が極端に増えてきました。 元来ゴシップ好きの私でさえ、SNSやワイドショーの悪口三昧から逃げたくなり、生活の相棒にと辿り着いたのがラジオでした。

久しぶりにいろいろなラジオ番組に触れてみて、そのあたたかみに癒されたりしていたのですが、そこで改めて思い出したのが、そもそも自分はかなりのラジオ好きだったということです。

初めてラジオに自らスイッチを入れてダイヤルを合わせたのは、小学生の時だったと記憶しています。 当時実家にあったモノラルのラジカセで、「ばつぐんジョッキー」(昼間の番組なのになぜか!)の、上岡龍太郎さんと板東英二さんとの曜日を超えた掛け合いを楽しんだりしていました。 また、ロイ・ジェームスさんの「不二家歌謡ベストテン」の名調子は今でも記憶に残っています。

中学生になってからは自分のラジカセ(TOSHIBA BOMBEAT)を入手。深夜放送の世界に入り込み、ちょっと大人の世界や学校以外の仲間の存在を感じ取ったりして、自分の世界が広がっていくことにワクワクしていました。 当時は「今夜もシャララ」「ポップン10分」「コッキーポップ」から「オールナイトニッポン」への流れが、夜の私のルーティンでもありました。 (オールナイトニッポンに関しては「誰を好きだったか。」で、同世代で盛り上がったり、世代の違いを楽しんだりできますね。)

高校時代に使用していたステレオのチューナー

中学時代の途中から高校時代にかけては、「FM局の音楽番組」も生活の中にしっかり入ってきました。 NHKの「サウンドストリート」やFM愛知の土曜昼間の邦楽、洋楽のベストテン番組など。 次から次へと紹介される内外の新曲に夢中でした。 (余談ですが、その時に流れていた「ステレオトリオ」の時報のジングルが、山下達郎さんだったと後で知った時は、だから素敵に感じたんだと納得したものです。)
当時は、週刊FM、FMレコパル、FMfan、FMステーションとFM雑誌を全て購読、タイマー付きステレオで、エアチェックなるものもしていました。
FMステーションについていた鈴木英人氏のラベルをカセットに入れたりして。

FMステーションについていたカセットラベル

そんなラジオ好きの私でしたので、社会人になって自分の制作したラジオCMが、かつて自分の聞いていた番組で流れた時の感動は格別でした。(「唄啓のこれは得だすお聞きやす」「FMバラエティ」などなど。)
一時期名古屋のAM2局の時報CMの両方を偶然担当できた機会があったのですが、その時は、周りにはわかってもらえない種類の不思議な気分の高揚を感じていました。
さらにある時、FMのある番組で、番組内のCM枠全5分40秒を自由に使って良いと言われた時は、神にもなった気分で、CMの登場人物がその番組を聴いている設定の会話劇を試したりと、制作に熱が入ったこともありました。

こんな感じで、ラジオが大好きだった私ですが、ここ数年は忙しさとSNSの波に飲み込まれて、しばらく遠ざかってしまっていました。
(せいぜい休日の夕方、レジャー帰りの車の中で時々「あ、安部礼司」を聴くぐらいでした。)

が、前述のとおり、ここ数ヶ月ラジオ熱ががぜん私の中で盛り上がっています。
いざ久しぶりに聴いてみると、各番組、なんて面白いことでしょう。
福山雅治さん、山下達郎さんをはじめとした長寿番組は相変わらずの楽しさでしたし、
さらに、リリーフランキーさん、木梨憲武さんなど、様々な方が本当に熱のこもったパフォーマンスをされています。 (ローカルですが、大前りょうすけさん、デラスキッパーズさんのトークも相当いい感じです。) 加えて、各局のアナウンサーさんがパーソナリティをされている番組では、まさに喋りのプロとしての話術を楽しむことができます。

人生のサイクルの中で、単に私が離れていただけで、
ラジオそのものはエンターテインメントコンテンツとしてずっと健在だったのです。

今、再び、私はラジオに夢中です。

ところで、ラジオの良さって何でしょう。
良く言われるのがパーソナルな存在であることです。 テレビが「テレビをご覧の皆さん」と呼びかけるのに対して、ラジオは「ラジオをお聴きのあなた」と話しかけるとても身近な存在だったりします。 タレントさんもテレビとは違う本音のしゃべりをしています。
また、タイムリー性、自由さ、フットワーク、音での想像力への刺激も、その魅力です。

そしてもう一つ。
私は、「出会いがしらの幸せ」こそ、ラジオの大きな魅力だと考えます。
思いがけない懐かしい曲、自ら進んでは絶対に聴かなかったであろうジャンルの曲、そういうことあるよなあと共感する話題、誰かに話したくなる蘊蓄など。
情報を検索して手に入れることが当たり前のこの時代おいて、この「出会いがしらの幸せ」に私の心は躍ってしまうのです。

ラジオは古いメディアというイメージも少しありますが、最近はradiko(アプリ)の登場により、若い世代には逆に新しいメディアとなっているようです。
あるクリエイターの方が、ラジオCMの企画をオンエアされる時間帯や曜日を踏まえて考えようとしていたところ、クライアントさんからそこは気にしなくていいと言われたそうです。
若者達にとってラジオは、時間を選ばず、好きなコンテンツを好きな時間に楽しめる便利なメディアとして再認識されているようなんです。

radikoのアプリ

radiko内最近のマイリスト

私たちの認識とは全く違う、新しいラジオの時代が来ている気がします。

そして私も、仕事をしながら、ジョギングしながら、家事をしながら、好きな時間に好きな場所で、好きな番組を聴いています。

みなさんもたまにはラジオで、「出会いがしらの幸せ」を体験してみませんか。
きっと、昔とは違う、新しい楽しさを感じられるはずです。

【著者紹介】

株式会社 ADKクリエイティブ・ワン
エリアビジネス局
中部ソリューショングループ クリエイティブ・ディレクター

加藤 英明(かとう ひであき)