リレーエッセイ

名古屋広告業協会会員によるリレーエッセイです。

2014年5月15日公開
第4回 日本のど真ん中「名古屋」の住民気質

アド大広名古屋平野社長からバトンを受けて第四走者を務める博報堂中部支社の原野です。

本論に入る前に少しだけ自己紹介します。1979年に博報堂に入社。初任配属の大阪を皮切りに、東京‐バンコク‐名古屋と
4都市を渡り歩きました。今回は、日本の三大経済都市と沸騰アジアの中心都市バンコクでの勤務・生活経験を基に、
ここ名古屋の住民気質と風土を、折角ですから、少しだけマーケティングっぽく、独断的考察を交え解説したいと思います。

「2012年4月1日付けで、中部支社勤務を命ず」
全くの想定外。それまでの17年間、海外業務を担当していた私に突然の国内営業復帰命令。
それも初めての土地「名古屋」です。戸惑いと期待と興奮をもって着任して、アッと言う間の2年が経過。
今では、我が家の食卓には「かけて味噌つけて味噌」が欠かせないほど、生活の名古屋化が進んでいることを
実感する今日この頃です。 そんな包容力と何となく感じる癖になる「違和感」はどこから来たのでしょう。

先ずは、デモグラから。
愛三岐三県の人口は、日本の約9%。

全国に比べて、子供と生産年齢(15~64歳)の比率が若干高め。男女共、生涯未婚者比率は全国平均を下回り、離婚率は全国で最下位。
DV相談件数も全国平均を大きく下回り、円満な夫婦生活を送っている。高度経済成長期の「健全なマイホーム主義」が憧れであり続け、
「結婚→出産/子育て→別れない」という意識/願望が強い土地柄といえるでしょう。結婚願望も、産みたい子供の数でも全国平均を大きく上回り、
男女ともに、結婚生活に対して夢や希望、期待値を強く感じている事が想像できます。

製造業従事者の比率が全国でも突出していて、就業比率から見ても、自他共に認める「モノづくりの街」である事は納得できます。

男女の性別感では、「男は仕事、女は家庭」という考え方が、全国平均と比較しても根強く残っているようです。 男女の平等感を見ても、職場・家庭・社会共に「男性優位社会」の認識が強く、
男性の家事参画も他地域に比べ消極的のようです。

個人の経済力を見ると、「一人当たり県民所得」「勤労者の年間所得」「年間所得1000万円以上世帯数」のいずれも国内トップクラス。
貯蓄は多く、負債は少ない。「お金は定期に入れて使わない」「万一の場合も保険補償で安心」「貯まったお金は投資で殖やす」の意識が名古屋で顕著に
表れています。

住生活では、東京・大阪・名古屋・北九州・広島・札幌・仙台の都市圏での持ち家率は、名古屋が圧倒的に高く、「マイホームの庭に花壇や庭木、
菜園を施し、犬を飼う」我が家を自然に囲まれた家族の城にする意識が強そうです。

衣生活では、特に女性・子供の服や靴にお金をかける傾向が見られます。「名古屋嬢ファッション」「名古屋巻き」なんていう名古屋独特のファッションが
話題になったこともありました。

食生活では、外食に掛けるお金は、和洋中あらゆるジャンルで、使用金額は全国でトップクラス。
「喫茶店文化」は、皆さんご承知の通り、全国トップで、喫茶代は全国平均の2.5倍です。
アルコール摂取状況では、量も種類も控えめのようです。これは、仮説ですが、
前述の「家族主義」「喫茶店文化」と後述する「クルマ文化」に起因するものでしょう。

ライフスタイルに目を向けてみましょう。
先ずは「クルマ」。登録台数・免許保有・自動車維持費・運転状況・有料道路使用料等を見ても全国でトップクラス。
通勤通学に加え、日常の足としてクルマを利用する志向が非常に強い。商業レジャー施設自体がクルマでの来場を
前提とした立地のものが多く、駐車場も充実。都心部の商業施設でも無料駐車券の発券は当たり前です。
続いて「地元びいき」。流通では、各業態で全国規模のナショナルチェーンに混じって「地場発祥・地場資本の
チェーン店」が根付いています。CVSの「サークルK」ドラッグストアの「スギ薬局」GMSの「アピタ&ピアゴ」は業界ナンバー1を差し置いて、地元ナンバー1チェーンです。 クルマは、「トヨタ」のシェアが全国平均を大きく上回り、
新聞も「中日新聞」がダントツ。金融機関でも、東海銀行の流れをくむ「三菱東京UFJ」を筆頭に、地元地銀が続きます。

最後に「サブカルチャーと風俗を生み出すアイデアとパワー」です。「マンガ喫茶」「パチンコ」は名古屋発祥と言われていますが、「メイド喫茶」も、源流をたどると名古屋に。
大須の「エムズ・メロディー」が、「お帰りなさいませ、ご主人様」という挨拶を最初に使ったお店とされているようです。

以上のデータから見る名古屋の住民気質を俯瞰すると、
「二世代標準世帯が多数の地域で、結婚→出産/子育て→夫婦円満を理想とする保守的な家族観とその為のお金はしっかりため込み、
モノづくりを男のロマンと感じ、男は仕事、女は家庭という高度成長期の性別感が根強く、自然に囲まれた戸建てマイホームで家族仲良く暮らし、
どこに行くにもクルマを利用し、
女性と子供のファッションにはこだわり、ハレの日には皆で外食、普段は喫茶店で談笑し、昔ながらのなじみのある地元のお店を大事にする、
かと思うと、独特のサブカルチャーと風俗を生み出すアイデアとパワーを持った、人たち」

こうして見ると、何となくどこかの国に似ていませんか?
そうです。我が日本国に似ている気がします。日本のど真ん中を自任する名古屋。日本における名古屋は、世界における日本。
まさに、名古屋は、日本そのものだと結論付け、第五走者にバトンを渡したいと思います。

お付き合い頂きありがとうございました。

【著者紹介】

幹事・運営委員長
株式会社博報堂中部支社 支社長

原野圭司(はらのけいじ)