名古屋広告業協会会員によるリレーエッセイです。
2018年8月28日公開
第41回「国府宮 はだか祭り」
株式会社電通名鉄コミュニケーションズ土屋様からのご指名を受けました株式会社中央廣告の矢田と申します。
私は6年前より「国府宮のはだか祭り」に参加させていただいています。「国府宮のはだか祭り」とは正式には「儺追神事」(なおいしんじ)といい、毎年旧正月十三日に国府宮=尾張大國霊神社(おわりおおくにたまじんじゃ)で行われています。
この神事は祈祷によって選ばれた一人の儺追人(なおいびと=神男)を巡って裸男達による壮絶な揉み合いを広げます。これは、神男に触れれば厄落としができるとの信仰からです。
当日午後からは「なおいぎれ」というお守りを「なおい笹」につけて、何組ものはだか男の集団が裸になれない老若男女の厄除けの祈願をこめて威勢よく拝殿へ駈け込んでいきます。
私は「桶隊」に所属させてもらっています。
神男に触るというよりは、水を掛け裸男達をひるませ神男を儺追殿へと導く役割の集団です。どちらかというと国府宮=尾張大國霊神社(おわりおおくにたまじんじゃ)側の人間となって、神男をなるべく早く儺追殿に入ってもらうように警護誘導する集団です。
水をかける担当は地元の消防団の方々ですので、私は桶を持つことすらできませんが、神男を儺追殿に運ぶサポートをしております。
桶隊が国府宮に入場しますと、会場の空気が一変します。桶隊が登場する=いよいよ神男が登場するからです。たくさんの待ち受けている裸男達のボルテージも一気に高まり、桶隊の「なおい笹」が奉納されると、あとは神男が出るばかりとなります。会場の裸男達しか入れないスペースの中でどこからか神男が出てくるのです。1万人近い裸男達が神男の登場を今か今かと待ち、笛と掛け声が怒号のように渦巻き始め熱気が最高潮に達していました。
午後5時過ぎ、本殿の大きな笹が宮司によって大きく振られ、祭りの開始が告げられました。いよいよ鉄鉾会(てっしょうかい)のメンバーに守られながら神男が参道に現れました。
【※鉄鉾会とは、かつて神男を務めた男達で構成された会です。】
因みに神男は毎年違う場所から現れます。裸男達は神男に触れて厄を落とす為に裸男全員が神男に向かって動き出し、まさに"超おしくらまんじゅう"状態となります。
桶隊が、神男に集まる裸男達から警護する為に桶に汲んだ水を裸男達に掛けて動きをひるませ、神男は裸男達を跳ね除け儺追殿を目指します。私もサポートするのですが、毎年全く役に立っていません。自分の身の危険を感じてしまいなかなか神男の近くまでも行くことができません。ですが神男に群がるものすごい裸男達の渦を儺追殿へ必死に押しています。
神男の登場から約1時間、儺追殿の近くまで神男は、やっとたどり着きました。場内はクライマックスを迎え、怒号が飛び交い、裸男達の揉み合いで辺り一面は白い湯気が立ち昇り熱気と興奮に包まれます。儺追殿から神男を引き上げようと命綱をつけた鉄鉾会(てっしょうかい)のメンバーが揉み合いの渦の中へ飛び込み、神男を抱え上げると儺追殿の中にいる多くの鉄鉾会メンバーによって命綱が一斉に引かれます。神男が儺追殿に入ると裸男達は歓声を一斉にあげ両手を高々と揚げ、拍手喝さいとなりました。
神男に触れた裸男も触れなかった裸男もしっかりと厄は落せていると毎年感じております。私も毎年その場で肌身に着けていた「なおいぎれ」を弊社の社員にも分けて、一年の厄払いができていればいいなと思っています。
簡単には属せない「桶隊」、最初は前厄本厄後厄の三年間と決めていましたが、気づけばもう6年、裸男達の熱気、興奮、感動を感じ、私には毎年の厄除けには欠かせない行事となっております。