名古屋広告業協会

名古屋広告業協会会員によるリレーエッセイです。

2015年12月17日公開
第18回「自業自得」

「貴方はもともとお酒が飲めなかったのに、ある時からお酒が好きになって、それ以来、飲み続けて今日まで来たんでしょう。
恐らく、ここ何年も休肝日など一日も作らなかったし、毎夜、寝酒をして来ませんでしたか。」「それでもたばこの方はかなり前に止めてはいますね。」と初対面の医師はCT画像を見ながら言う。
「悲しいかな、全てお見通しですね。殆どその通りですが、どうしてそんなことが分かるんですか、」と私。
医師、「そんな人しか、ここには来ません。だから必ず当たります。下咽頭がんの原因の90%は喫煙と飲酒で、貴方の場合は間違いなく飲酒です。」
私、「はあ、(ため息)そんな病気があることも知りませんでした。」
医師、「10万人に4、5名しか侵されないから。かかって初めて病名を知るんです。全て自業自得です。自ら招いた不幸と自覚してこれからの治療に向かって下さい。」
「は、はい、(元気なく)」
2015年2月26日、名大病院耳鼻咽喉科診察室の会話のスタートがこれである。

その後の検査・MRI・PET検査を経て、ステージⅡのT2との診断
医師、「患者の多く、70%以上の人はリンパ節に転移して首筋が腫れて自覚症状が出て来てから見つかるんです。外から触って分かるようになってから来ても、その時点で既に進行がん。貴方の場合は自覚症状もない段階で、毎年の人間ドックの胃カメラ検査で早く見つけてもらって良かったですね。その胃カメラ検査でも注意して診ていないと、見落とすことも多いから検査医師に感謝ですよ。」

治療方法は2つ選択肢があって、手術療法か化学放射線療法で両方とも完治出来るとの予測。どちらか選びなさいと言われたが、どちらを選択しても一長一短あって、いつもそうだがこんな時こそ迷う。

2015.3.11 藤田保健衛生大学病院セカンドオピニオン外来へ。
二人の教授(共に名大医卒)がCTデータを事前に見たうえでのカンファレンス。応接室での2プラス看護士さんの3対1でこちらは緊張ぎみ。
「疼痛に関しては、手術よりも化学放射線療法の方が強いと考えられる。手術の方が、味覚障害は出現せず、治療後に美味しく食事が出来るし、大好きなビールの味も変わらない。」
とは言われても「もし手術で全てのがんを取り切れず、その後で抗がん剤・放射線治療が待っているとすれば、最初から手術で身体にメスを入れるのはどうしても躊躇われます。」
「手術に自信が無ければこんな風には言わない、今ならば根治的な切除が可能です。」
「もし、お二人が私であったらどちらの治療を受けるか。」
「間違いなく手術を受ける。」

          治療計画書
病名:下咽頭がん
治療計画:4/13下咽頭部分切除術、左頸部郭清、遊離前腕皮弁再建、喉頭挙上術、気管切開術予定(興味のある方はネットでお調べ下さい)
推定される入院期間 2015/04/09~05/11

4月9日入院
4月13日 朝9時~ 11時間に及ぶ手術
術後治療の為、予定を大幅にオーバーしての入院生活(主治医曰く想定の範囲内)を経て5月31日退院。


4月9日 入院時の写真

担当看護婦さんから、私のような患者には今まで接したことがない初めての体験が3つ。
1.術後10日目から鶴舞公園で始まる毎朝6時30分からのラジオ体操に間に合うように外出し、その後大須観音まで1時間30分往復散歩する患者
2.術後3日目に病室のベットマットが硬くて寝れないと言って娘に低反発マットレスを買いに行かせ、病室に持ち込んだ患者
3.入院中なのに術後の後遺症の治療にと言って主治医の許可を求めて、15時になると外出して針治療院に通った患者

退院後、毎月の検査及び三か月CT検査でも転移が無い「GOOD」と言われ、続いて聞かれることは決まって
「ビールは、櫻井さんだから飲むなとは言いませんが、ちゃんとセーブしてますか。」
「はい。週に2日、水曜日と日曜日、は出来るだけ休肝日にしてます。深酒と寝酒もしてませんよ。偉いでしょう。」
「当たり前です。これからも必ずそれだけは守ってください。」

毎月処方される薬は肩の凝りの為の温湿布のみ。但し術後の後遺症には悩み多き状態。


退院時の写真 次女と一緒

これを読んでいただいている皆様へ私からのメッセージ
1.人間ドックでは必ず胃カメラによる内視鏡検査を受ける事。
その折には咽頭部もよく診て下さいとお願いの事

2.飲酒は必ず休肝日を週に一回は設ける事
ましてや寝酒などもってのほか。

3.万が一、咽頭がんになってしまったら私にご相談下さい。色々サードオピニオンとしてアドバイス申し上げます。


健康が一番!


近況 8月23日 がん封じ寺へ