名古屋広告業協会

名古屋広告業協会会員によるリレーエッセイです。

2016年1月22日公開
第19回「サカダン」

シー・ウェーブの櫻井さんからバトンを受けました、オリコム名古屋支社の岩崎です。 東日本大震災直後の4月に東京から名古屋に赴任してきました。 生まれて初めての単身生活もそろそろ5年になります。

東京に生まれ育った私は、それまで名古屋という地にほとんどご縁がありませんでしたが、実際に住んでみると、まず、その住みやすさにびっくりしました。 通勤はラクだし、取引先も近場が多いし、山や海などの自然は近接しているし、何よりゴルフ場が近い! 「どて」などの名古屋メシも最初から美味しくいただけましたし、居心地のいいごひいきの店もすぐにいろいろとできました。

住めば住むほど、本当に名古屋に永住したくなるくらい名古屋が好きになってしまったのですが、その最大の理由は、住みやすさもさることながら、名古屋でお付き合いいただいている方々、つまり人間そのものにあると今では考えております。

よく、名古屋人は、なかなか心を開かず、ムラ意識が強く、ヨソ者に対しては冷たいというような話を伺います。 まあ、確かにそういう面もあるかもしれません。 しかし、いったん深くお付き合いが始まると、本当に一生の関係にまで発展します。

私が、それを一番強く感じているのが、栄ミナミ男声合唱団(通称サカダン)に入団してからです。 それまで、合唱などやったこともありません。 新栄の行き付けの店の常連に団員が多かったというご縁で入団することになったのです。 団員は50名ほどで、結成されて9年になります。 何でも三枝成彰氏率いる六本木男声合唱団(ロクダン)の名古屋版を作ることを勧められたのが結成のきっかけとのこと。 とは言え、楽譜を読める人間は当時からほとんどおらず、全くのシロウト集団です。 メンバーは、会社経営者や大学教授、弁護士に税理士、医師といった錚々たる顔ぶれですが、忙しい中をやりくりして、毎週練習に参加しています。 活動の場としては、栄ミナミ音楽祭や名古屋まつり、ナディアパークでのクリスマス・コンサートの他、年2回は、老人ホームで訪問演奏会を実施しています。
http://sakadan.jp/

職種はバラバラですが、個性派揃いで、お酒が好きで、遊びも好きという点では共通項もあるのかも知れません。 皆、忙しいにも拘らず熱心に練習に出席するのは、指導くださっているのが美人ソプラノ歌手と美人ピアニストだからだという声も多く聞こえます。

当然、練習や演奏会の後は、必ず宴会が催されます。これがまた楽しいのです。 仕事の利害関係がまったくない人たちとの、たわいもない会話が、名古屋での単身生活の寂しさをどれほど癒してくれたことでしょう。

ただし、演奏会は真剣そのものです。毎回、新曲にも取り組みます。 前回の栄ミナミ音楽祭では、フィンランド語の「フィンランディア」と、イタリア語の「ナブッコ」を暗譜で歌うという超過酷な試練もありました。 毎週の練習の他に、テナー、セカンドテナー、バリトン、バスそれぞれがパート毎の特練をさらに行なわないと、ついていけなくなります。

また、老人ホームでの訪問演奏会は、こちらがむしろ感動をいただいています。 真っ赤なブレザーを着た平均年齢50代半ばの男たちが歌い出すものですから、皆さん、最初はあっけにとられていますが、そのうちノリのいいお年寄りは、一所懸命に拍子をとってくださいますし、客席と一体となった唱歌コーナーでは、多くの方が大きな声で歌ってくださいます。 演奏を聞いてくださった方が亡くなる前に書かれた手紙が披露された時は、多くの団員がステージの上で涙を抑えることができませんでした。

サカダンに味をしめたわけでもないのですが、サカダンメンバー数人が参加している関係で、金城学院のヘンデル・メサイア合唱にも3年連続で参加しています。 これは、2時間にもわたる大曲ですし、楽譜の読めない自分にとっては、かなり大変なことだったのですが、左右から聞こえてくる金城学院の中高生の天使のような歌声の美しさと、コンサートの後の達成感は言葉では表せません。

このように書くと、まるで自分の名古屋生活が合唱一色のように見えるかもしれませんが、そういうわけでもありません。 むしろ、サカダンという合唱団をきっかけに知り合った仲間たちと共有する時間、お酒や旅行やゴルフなどが、本当にかけがえのない、一生の経験になっているのです。

そのサカダンが、今年10周年を迎えます。2017年3月には、記念コンサートも予定されています。 その時、自分がまだ名古屋にいて参加できるかどうかはわかりませんが、ぜひ多くの皆さんに、素人のチョイ悪オヤジ集団が一所懸命歌う姿をご覧いただけたら幸いです。

サカダンのスローガンは、「Happy? Happy!」
サカダン団員に限らず、支社員やお取引先、業界の方々、飲み友達などの人間関係のおかげで、私の名古屋ライフは、すこぶるHappy!です。 このような仲間に恵まれたことを感謝しつつ、次の方へバトンを渡したいと思います。