名古屋広告業協会

名古屋広告業協会会員によるリレーエッセイです。

2017年8月18日公開
第34回「くう ねる あそぶ」」

中部日本広告社の野瀬でございます。
新聞社勤務の後、定年前現在の会社に移りました。
今回は前ライターで一緒に会計監査を務めている渡辺さんからのご指名を受けました。

糸井重里さんのコピー「くう ねる あそぶ」に井上陽水が「みなさーん、お元気ですか?」と投げかけ歌う車のCMがありましたね。ちょうど昭和から平成に替わる時期活気ある日本を象徴したメッセージ、わくわくする楽しさを呼び起こす名作でした。

年々齢を重ねわくわく感の乏しい生活を送っていますが、旅に出かけてリフレッシュしています。
旅の楽しみも「くう ねる あそぶ」 と三拍子ですね。
学生時代から東南アジア・インドに興味を持ち沢木耕太郎の「深夜特急」と同時期にプチ放浪をしていました。長期放浪の誘惑がある中、よく帰国して会社勤めができたものだと思い返します。
今では短い旅ですが旅程のなかに市場めぐりと現地食は欠かせません。
アジアを旅すると街の臭い、空港に降りたとたんに空気の違いを感じます。
排気ガスや生活臭が混ざる中、何を食べてるんだろうと鼻をぴくつかせたり。
私の旅の楽しみは第一に現地の味に触れることでしょうか。
市場で金華ハムを買いバックに忍ばせ密輸しようとするもあえなく空港で没収されたり、好奇心で得体の知れない屋台料理を覗いたりと。
そんなことからエスニック料理が好きで自宅で怪しげな料理の真似事をすることも。

放浪作家と謳われた檀一夫親子の名料理本「檀流クッキング」「新檀流クッキング」をバイブルに台所でごそごそやったりしたものです。
旅先で買い込んだ香辛料の強烈な臭いと味に家族からはあまり歓迎されませんね。


立派な焼き豚

金華ハムは没収

串焼きもいろいろ

グロテスクですいません

ちょうど10年前、北京で日中間の文化・スポーツ交流年事業のフィナーレを飾る人民大会堂での大歌謡ショーに立ち会う機会がありました。
日本側は谷村新司、松任谷由美、ガクトなど。中国全土からは様々な民族衣装の少数民族も出演し紅白歌合戦の日中版。
閉幕後に両国関係者と盛り上がった火鍋の味と白酒の乾杯が忘れられません。やはり“くう”は国境を超えるのですね。
一方で日本企業の皆さんに現地での苦労話、様々な交流の努力にもかかわらず壁は厚いと聞かされたものです。


人民大会堂の歌合戦

時を経て今ではインバウンドが増加し隣国の旅人と触れ合う機会も多くなっています。築地に代表されるように市場を訪れるのもブームのようですね。
先日、札幌で老舗ジンギスカン店に行ったところ長蛇の列はほとんど海外からの旅行者。むしろ本場から来たような人達に並び方を教え、狭い店内で七輪を囲みました。
やはり“くう”コミュニケーションは一番ですね。
隣国ともすっきりしない関係が続き、テロや民族闘争など世界中が揺れ動いています。旅先で物々しい警備に実感したりしますが、眼を見張る発展と熱い活気にも驚きます。

そんな異国の断片を覗くだけですが、「くう ねる あそぶ」旅、中でも“くう”でささやかな交流ができればと思いつつ井上陽水のCMソングが懐かしいこの頃です。


築地も札幌も大人気