名古屋広告業協会

名古屋広告業協会会員によるリレーエッセイです。

2016年11月21日公開
第26回 「広告教育」

株式会社博報堂中部支社 浜口支社長様よりご指名をいただきました㈱三晃社の川村です。

私は広告の世界に入って17年、東京・名古屋(本社)を主な活動拠点として、業務にあたってきました。
今回は、例年、時期になりますと新入社員採用の場に立ち会う機会が多いこともあり、将来、広告業界の第一線での活躍を期待する、学生を含む若手社員に対する「広告教育」について、日々、想うところを記させていただきます。

愛知・名古屋は、以前より“教育愛知”と云われるように、教育レベルの高い地域といえます。
“ものづくり愛知”を支える一つが、産官学が連携した研究開発機関・施設の充実が挙げられます。
とりわけ、平成24年にオープンした「あいち産業科学技術センター」は、“知の拠点あいち”の中枢となる施設と位置づけられています。
当地区における自動車、航空宇宙、ロボットなど、産業技術の発展に寄与するところは大といえます。
また、これまで、この名古屋と関わりのあるノーベル賞受賞者を多く輩出していることも見逃せません。2008年には、名古屋大学理学部卒の小林誠さんと益川敏英さんが、2014年は名古屋大学工学部卒の天野浩さんが、それぞれ物理学賞を受賞されています。そして、今年、生理学・医学賞を受賞された大隅良典さんは、地元大学の出身ではありませんが、岡崎にある国立共同研究機溝の基礎生物学研究所で長年にわたって過ごされ、当地区との関わりの深い方といえます。

このように、確かに理系の分野は強いが、では、文系はどうでしょうか。
この地区の主要大学のカリキュラムを調べてみますと、文科系の学部において、マーケティング、マルチメディアなどの科目が実施されていますが、学生が本格的に広告学について学ぶ機会は少ないといえそうです。
個の時代といわれて久しいですが、ITが当たり前に使われる現在、まさに個々の指向を商売の相手として捉えなければならず、市場調査でも今までの「平均値」は意味をなさなくなってきていると言えます。クラスター分析などの新しい考え方、手法を積極的に取り入れていかなければならない中、それらを「広告」として学ぶ場所が少ないのが現状ではないでしょうか。
私は、現在、愛知淑徳大学(交流文化学部)で、非常勤講師として広告・コミュニケーションについて講義をしていますが、学生たちは熱心に、興味を持って聴いてくれています。

一方で、新卒採用の場に立ち会うケースは多いですが、以前に比べ広告の知識に秀でた学生は少ないように感じます。

ところで、広告会社を取り巻く①市場・マーケティング ②メディア・コミュニケーション ③生活者の環境が大きく変化している中で、今後広告会社が成長していくためには、この変化に対応できるソリューションを再構築する必要が出てきています。
中でも、広告メディアが、従来のアナログからインターネットによってデジタルメディアになったことにより、広告とテクノロジーが結びつき、数多くのイノベーションを起こしている。いわゆるアドテクノロジーに対する取り組みが急務といえます。
このことからも、ITやAI分野を中心に、より専門的な知識を学んだ人材を、外部に依存するだけでなく社員として確保することが不可欠となっています。



このような状況を踏まえ、優秀な人材の育成と獲得に向け、この名古屋でも、本格的に「総合的な広告学」が学べる環境づくりが必要と思います。
東京では、こういった動きが始まりつつあるようです。大学院大学等も、そのひとつと考えます。
この名古屋においても、学生や若者を対象に産学が連携して、より実践的な広告教育、とりわけ最先端のIT社会に対応できる教育と研究の場(機関)の誕生が望まれます。